昨今だと「作業用BGM」という表現が多いと思われる「なにかをする・考えるときに流す音楽」は私にもやはりあって、それは考える対象によって趣向を変えて聴いている。毎回流すとは限らないものの、テンションをあげたいときはロック系ポップ系、集中したいときはインスト系、のように一定の基準のようなものがある。そして、キャラクターの考えを固めたいときはボカロ系(私のなかではVOCALOID・UTAU・CeVIOなどを使用した音楽)を聴いていることが多いと思う。
私は小説を読んでいるときほわほわとした想像力を刺激されやすく、この感覚がけっこう好き。おそらく一目でわかる情報量が少ない分、情景を自分で想像しながら読む必要があるから、ちょうど好みのほわほわな刺激があるのだろうと思っている。ざっくり言えば 映画>漫画>小説 の順番で情報を多く感じる。小説の後ろは詩あたりかなあ。詩までいってしまうともっと多くの想像力を働かせるので、ほわほわと刺激される感覚はあまり得たことがないかも。でも歌詞となると詩よりは情報を感じる。そして、音楽はだいたい映画と漫画の間か、漫画と小説の間かなあと思う。私は人の「肉声」にかなりの情報量を感じ、逆にボカロ系の歌声を本質的に「機械」だと認識しているので、歌声が聴こえるのに肉声より情報量が足りない感じがふしぎな感覚になってそこが好きで、ボカロ系の曲を聴いているときは小説を読んでいるときの没入感に近いものを感じているのかなあ……などといろいろ考えたけど、もちろんどのコンテンツも好きで、でも「好き」でもそれはいろいろな楽しみ方で好きなんだなあと、それぞれの楽しみ方をしているのが改めて面白くてこういう感覚も好きです。
というわけ(?)で『ポラリティ透明期』の主要キャラを考えるときに聴いていたボカロ系の曲を趣味で4曲ずつ紹介します。「このキャラクターをこういう感覚を抱く存在にしたい」と考えながら聴いていたので、雰囲気がなんとなく共有できたらうれしいです。絵は描いたけどがんたろうくんはないです。(▶キャラクターの名前クリックで展開します)
しおん
- Orangestar - アスノヨゾラ哨戒班
- ナユタン星人 - ストラトステラ
- Eight - とても素敵な六月でした
- コウ - メアの教育
前半2曲はぱっとしおんを見たときの印象、後半2曲は彼女をよく見たときの印象にしたいなあと思いながら聴いていました。
とっつきやすい感じ、好ましい感じ、メジャーな感じ、ふしぎな感じ、だったのが知れば知るほどよくわからなくなって来る、抽象的で、少し怖いような気もする感じを目指したいなあと。
Eightさんの『とても素敵な六月でした』の歌詞は、ことばが意味のある文章になるまえにどこかへ融けて消えていってしまうような、儚くてふしぎな美しさがあってとても好きです。「意味がわからないけどなにかわかるような気がする」という感覚が好きなので、キャラクターというよりは物語の一部でもそういう感覚になれる作りを目指したいです。
不由美
- Omoi - テオ
- DECO*27 - ヒバナ
- wowaka - アンノウン・マザーグース
- msy - 大人になったら
前半2曲は不由美ががんばってこうあろうと表に出している面や激しさの印象、後半2曲は彼女の内的なもの、意外と落ち着いていて、どこか恐怖を抱いている感じの印象にしたいなあと思いながら聴いていました。
『アンノウン・マザーグース』のサビの冷静な感じというか静謐な感じとても好きなんですよね。wowakaさんのミクの声すごく好きです。msyさんの『大人になったら』の歌詞の「私はまだまだ強くないの もうもうラスボスの前 ここまで全部友達と進めたの ひとりじゃ勝てないよ」が少女の等身大さを感じてめちゃくちゃかわいくて好きです。なんというか、身の程を知ってしまっているというか、この雰囲気にぐっと来ます。
ラカ
- MI8k - 絶対的少年値
- wowaka - 僕のサイノウ
- カンザキイオリ - 自由に捕らわれる。
- ユリイ・カノン - だれかの心臓になれたなら
前半2曲はラカをこういうキャラクターにしたいと思い、後半2曲は意外とラカはふつうにこういう欲求も持っていそうかなと思いながら聴いていました。あと可愛げがあり幼い湿っぽさや葛藤の要素も。そこに足してラカは容姿の才能があるというキャラクターにしたく。
ミヤケさんの『絶対的少年値』の歌詞で「論理的じゃない本能でもない 今の僕は曖昧になっていなけりゃ 才能がないことを思い出してしまう」というフレーズがとても好きです。曖昧の美ってありますよね。
あとwowakaさんの『僕のサイノウ』ですが、この曲はwowakaさんの曲のなかでいちばん好みです。ミクの声に涙性を勝手に感じてしまうし、聴いていると心地よい哀しげな心持ちになります。歌詞の「平凡な日々を思うと,何かを失う気がする。単純に,きみを追うと,なぜ哀しいの?」「凡人たちが綺麗に見えた。」という胸が張り裂けそうなまでの持って生まれた者の孤独感がとても好きです。そういえば学生時代の講義で「創作は孤独に共鳴させるもの。なぜならば創作物に触れているとき、だれもが孤独の状態だから」だと習ったことがあり(この孤独の状態とは、周囲に人がいくらいようとも、なにかを観たり聴いたりと作品と対峙しているときは作品対自分だけである状態という意味)、それを思い出して妙に納得感がわいてきました。人の孤独に共鳴するから惹かれるのかなあと。
曲の世界観とは別で趣味の話ですが、たとえば武力でも知力でもなんでもいいですがなにかの天才がいたとして、その人が「己の才の部分が欠落したとき=己の死」であると認識していると「いいなあ」と思います。それを気にしないパワー型天才もいいなと思いますが、それを気にする芸術型天才もいいなと思います。諸行無常的な美しさを感じます。
タケル
- Guiano - 忘れたいことばっかだ
- 4ma15 - 然れど応答は冴えず
- 梨本うい - リピート
- カンザキイオリ - ハグ
全体のイメージとしてめちゃくちゃ暗いわけではないが、むりして明るくすることもなく、どこか切ない感じを湛えている雰囲気をタケルにまといたい、ラストの『ハグ』は自分が心を許せる大人へ見せられたらいいかなと思いながら聴いていました。タケルは大人枠っぽいけれど現実的に年齢で考えればまだ子どもが崩れてきている中間具合なので、このあたりのバランスを抱えているイメージになればいいかなあと思っていました。
Guianoさんの『忘れたいことばっかだ』はどこかの時間のなかで、なにか戸惑っていたり悩んでいたり、そんな瞬間の人間の綺麗さを感じて好きです。このflowerの声もとてもいいなあと思います。4ma15さんの『然れど応答は冴えず』はテトの声もあいまってこのダウナー感がたまらなく好きです。コーヒーが似合う感じというか、なんだか素敵だなと。
じょう
- 6410 - APATITE
- syudou - 馬鹿
- Nanou - 3331
- 電ポルP - 独りんぼエンヴィー
前半2曲はじょうが他人に見せる感情、直情的な面、本人も自覚的な面、3曲目は本人も自覚的な面だけど表に出さないところ、ラストはじょうの精神年齢がとまったときや彼の行動原理で、本人に自覚はないイメージにしたいなあと思いながら聴いていました。じょうは自己分析がいちばんできないタイプで本質を知りたくないだろうし、知ったところで認めないタイプかなとなんとなく思います。
全体的に激しさや鬱っぽさの感じが曲として好きです。ナノウさんの『3331』は出だしから「物語によれば人生とは幸せでなければいけないらしい もしそうなら私の毎日は人生とすら呼んじゃいけないよ」なのですが、自分はもうこの時点でこのミクのことがほうっておけなくて気になります。あと「人生にアンコールなど無い 残機一機じゃ不安で寝れぬ」というフレーズも好きです。「アンコール」だと想像するのがアーティストや演劇のライブだけど、次の「残機一機」ですぐにゲームが想像できるし、頭のなかで映像の切り替わりがあって面白くて好きです。
アリス
- keeno - glow
- Crusher - Again
- カニミソP - 細菌汚染 - Bacterial Contamination -
- syudou - キャラバン
1曲目の雰囲気が他者がアリスへ抱く印象の面、残り3曲はアリス本人の自己認識、自分はほんとうはこういう人間なんだと思っている面、というイメージが投影できればいいなと思いながら聴いていました。
keenoさんの『glow』ほんとう素敵な曲ですよね。「赤」は情熱的なイメージなことが多いですが、この曲は「静かな赤」でまた魅力的だなあと思います。曲全体に夕暮れのような切なさがあって好きです。
クラッシャーPの『Again』もめちゃくちゃ好きです。この曲をはじめて聴いたとき、勝手にかなりの共感をしました。かっこいい曲調が素敵なのはもちろんですが、ライターを選ぶあたり歌詞の世界観が好きですね。「Every inch of me is charred, God, what happened to my heart?(私はすべて真っ黒焦げ、神様、私の心に何が起きたの?)」あたりのフレーズが特にいいです。双極の狭間感というか、ラカのコメントでも触れたように曖昧の美というか、白黒の中間であるグレーのラインだからこそのよさや、引き裂かれそうな感じがたまらないです。
ドクトル
- MARETU - うみなおし
- 虻瀬 - キリスト
- SLAVE.V-V-R - 今宵は彼奴めを拐かし、いざ麗しき闇を燃やさん。
- 梨本うい - 心気妄想壁
1~3曲目はドクトルの価値観や言語感覚のイメージで、ラストは彼の内に灯っているもののイメージになればいいなと思いながら聴いていました。ドクトルは10代頃に見ると大人っぽく見えるかもしれないけど、大人になって見ると「めちゃくちゃキッズじゃん……」くらいのキャラクターにしたかったんですよね。あと、見る人が見ればドクトルのことは「笑える」「面白い」と思えるようなタイプにしたかった。本人は真面目だけどユーモアを感じる、別軸で生きている感じ。シオラン系愛読していそうな感じ。 第一印象は「なんだ!?」みたいだったけど段々と「よく見りゃ面白いね」というふうなイメージができればいいなと。
MARETUさんの『うみなおし』はMARETUさんの作品のなかでいちばん好みです。音とか世界観とかぜんぶ好きなんですよね。虻瀬さんの『キリスト』もかなり好みです。別の『神様、俺を、怪物を。』に並んで自分のなかの虻瀬さん二大好き曲です。私は基本的に怪物という存在が好きなので刺さります。比喩としての怪物、概念としての怪物というか。畏怖される、理解されない存在、魅力を感じます。SLAVEさんの『今宵は~』ははじめて聴いたとき笑いました。面白いです。シャレオツユーモラスな感じが好きですね。ういさんの『心気妄想壁』のラスト「お前なんかに命は渡さない」も刺さりました。ういさんの作品はいろいろなことが表裏一体な雰囲気があって好きです。あとういさんのミクの声も好きなんですよね。私はVOCALOIDだと特にGUMIとミクの声が好みかもしれないです。
がんたろう
がんたろうくんはイメージを固める作業が必要なくすっとできたキャラクターでした。基本的に無意識がなさそうなキャラクターはすっと考えられるかもしれないです。先生たち(醐坐、宇洞など)もがんたろうくんと同じくすっとできたので、なにも聴いていなかったです。逆に主要キャラクターじゃないけど刃花のようなキャラクターはイメージを固めたかったので他のキャラクターのように曲を聴いていました。
というわけで単なる趣味でいろいろ書いてみました。なにかおすすめの曲があればジャンル問わず教えてほしいです。曲じゃなくてもOKです。
niconicoの動画埋め込みはjimdo非対応のようでできなかったけど、動画情報とサムネイル埋め込みコードは対応しているようなのでそちらを使用。
イラスト描いてて、がんたろうくん以外基本的に大口あけて快活に笑いそうなキャラクターがいないなと思った。じょうは快活な笑いはしないだろうし、しおんも口のつくり自体が小さそうだし、でも絵のバランス的に一枚に収めるときは大口あけて笑ってくれる人がいてくれないと感……顔的にはアリスがいちばん描きやすかった。
ヘッドホンはみんな無線だけど、現実的な話として無線のものって充電必須なのが面倒に思うときがある。すっきりして楽ではあるけど。